第十四話 漫画になっている椿山伝説

その地域の地名や歴史は伝承も含め、現在に活かせるコトが多い。
真澄はその地名や伝承、祭をたくさん書き残している。
地域固有の個性豊かな伝統芸能や美術工芸品、お祭り、歴史的な建造物や町並み、史跡等は、次世代に継承していくべき国民共通の財産である。
つい最近も奥州市の黒石寺で千年続くと言われる蘇民祭が後継者の不足から神事だけに縮小されるとの報道があった。
住民の減少や高齢化、既存産業の衰退、観光客の減少、そして地域を牽引する次世代リーダーの不足などを課題を解決するには、改めて地域資源をブラッシュアップし、時代に即した地域ブランディングをすることが大切だ。

漫画になっている椿山伝説
その見事な椿の花が自生する椿山には、物悲しい伝説が語り伝えられている。
その昔、越前商人の横峰嘉平という人が交易に訪れたとき、村の娘お玉と契り、末は夫婦になろうと誓い合った。しかし嘉平は商用で一時国へ帰らなければならなくなり、お玉は「京の女がつけている椿の油が欲しい、今度来る時はその実を持ってきてください」と泣いて別れた。
お玉は嘉平を待ち続けたが、約束の年になっても船は来なく、待ち焦がれたお玉は、嘉平を深く恨んで海に入って死んでしまった。
村の人々は泣き悲しみ、海が見えるこの地にお玉の墓をつくって埋めた。
その三年後、嘉平は約束の椿の実を持って帰ってきた。ところがお玉は待ちきれず自死している。それを村人から聞いた嘉平は、倒れんばかりに嘆き悲しんだ。せめて慰みにと椿の実をお玉の墓のまわりに埋めてやるとそれが芽を出し、年々繁殖し今日のように椿が山を覆うようになったという悲恋物語だ。
この椿山の伝説が意外なところで表現されている。
漫画やアニメで世界的な人気を誇るONE PIECEのワノ国編である。
主人公ルフィーの義兄弟のエースが、新世界を航海していたある日、食糧不足で餓死寸前であったワノ国の編笠村に漂着した。
エースは村人達に食料を分け与えることで信頼を得ていく。
中でも少女のお玉はエースに懐いた。
エースが出国する時、お玉は自分も一緒に行きたいと頼むが「大きくなったら連れて行ってやる。もう一度ワノ国に来たら、腹いっぱい飯が食える国にする」と約束しワノ国を去った。
しかしエースはお玉との約束を果たせぬまま頂上戦争で命を落としてしまう。
それを知るよしもないお玉は、必ずエースは帰ってくると待っている中で、訪れたルフィーからエースが死んだことを伝えられた。
原作者は青森の出身ではないが、椿山伝説を知っていたのか?
アニメ・ツーリズムは世界に通用するコンテンツの一つであり、この類似の物語をインバウンドで使わない手はない。